チェンナイ・カンチープラム

タミール・ナドゥ旅行記1日目 (12月21日)


チェンナイの人口は600万人の大都市です。ムンバイ、デリー、カルカッタ、とならんでインドの4大都市のひとつです。この国では人口100万を超えないと「市」とは呼ばないのだそうです。 そして人口が500万人を超えると大都市と認められるのです。今日の目的地のカンチープラムは人口約20万人なので単なる「町」なのです。

チェンナイの旅の基点は「ホテルセヴェーラ」(Hotel Savera)。街中にあるホテルです。ホテルセヴェーラの一階にある「ピアノレストラン」でビュッフェ形式の朝食をとりました。結構美味しかったです。スリランカの痛烈でかつ比較的単純な辛い料理を食べてきた私には、インドの辛さはもう少し複雑でマイルドな感じがします。数時間前に機内食を取ったのに不思議に朝飯も食べることができました。なお今回の旅行で朝食に「ベジフード」以外の朝食が出されたのはここだけでした。

このホテルの一階の庭にはプールがありました。朝早くから子供達がコーチの指導の下で水泳の練習をしていました。子供達は結構上手い。スイミングプールなどあまり無いでしょうから、こうしたホテルのプールを利用しているみたいです。インドの水泳選手がオリンピックでメダルをとるのもそう遠くないのではないかと思われました。



ホテル・セヴェーラの外観


ピアノレストランの美味しい朝食



ホテル玄関に駐車しているチェンナイで良く見かけるアンバサダー



ホテルのプールです。
チェンナイはそれほど暑くはなかったので
泳ぎませんでした。
水着は勿論持参しています。

今日の日程は、カンチープラム(Kanchipuram)とマーマラプラム(Mamallapuram)。しかし、途中で日程を変更してカンチープラムの後はチェンナイに戻って市内観光することにしました。

カンチープラムはチェンナイの西約70Kmくらいのところにある大変有名な宗教都市です。カンチープラムは紀元前2世紀ごろ前期チョーラ王朝(Early Cholas Dynasty)の首都がおかれていたところです。さらに6世紀から8世紀にかけてはパーラヴァ王朝(Pallava Dynasty)の首都がおかれました。 王朝がヒンズー教を庇護したことからこの町には120を超えるヒンズー寺院があるのです。ヒンズー教の7大聖地のひとつ に数えられています。この7大聖地とは、Kashi(バナラシ)、Ayodhya(アヨドヤ)、Mathura(マツーラ)、Maya(ハードワ)、Dwaravati(ドゥワラカ)、Avantika(ウジェイン)、そしてKanchipuramです。

チャンナイからカンチープラムへの道は途中まで高速道路を利用できます。 この道は国道4号線と言ってチェンナイからバンガロールを経由してムンバイに達する幹線道路です。車はTATAのインディカ(800CCガソリン車)です。時速80Kmくらいのスピードで走りました。高速道路から外れて田舎道に入ると周囲の眺めは一変しました。広大な田園地帯(稲作をしています)が続きます。そしていたるところに「パルマイラ椰子」の木が生えています。この風景はスリランカのジャフナの原型そのものです。 この辺では米を年二回から三回作るのだそうです。田は稲刈り後だったり、緑の若芽の時期だったり風景はばらばらです。日本みたいにいっせいに田植えをする必要がないようです。アスファルト舗装されている田舎道は稲藁を干すのに最高なのでしょう。 あちらこちらで稲藁を道路一杯に広げているのでそれに出くわす度に車はスピードを落とします。道沿い には背の高い「パルマイラ椰子」が時折生えています。
 



チェンナイ郊外の田


 
道路沿いのパルマイラ椰子


 


カンチープラムのヒンズー寺院

エーカンバレシュワラ寺院(Ekambareswarar Temple)

カイラーサナータ寺院(KAILASANATHAR TEMPLE)

ヴァラダラージュ寺院(VARADARAJA TEMPLE)

 


エーカンバレシュワラ寺院(Ekambareswarar Temple


まず最初に訪問した寺院は「エーカンパレシュワラ寺院」です。ここはシヴァ神を祭る寺院。最初パーラヴァ王朝の時に建てられ、チョーラ王朝のヴィジャヤラージャ王の時代に再建されたのだそうです。 現代インドのヒンズー教においてはシヴァ派とヴィシュヌ派が大きな宗派となっています。シヴァ派の神「シヴァ神」は家族そろって皆有名です。奥さんが「パルヴァティ」、長男が「ガネーシュ」、末っ子が「ムルガン」です。それぞれが信仰対象となっています。ムルガンはスリランカ南部聖地のカタラガマでも祀られています。

この寺院の建っている場所の謂れは次のような話です。 シヴァとパルバティがヒマラヤに住んでいたとき、妻のパルヴァティがいたずらでシヴァを一秒間目隠ししてしまったのだそうです。そうしたところ世の中の全ての生き物は数年間闇夜の中で暮らさなければならなくなってしまったのでした。シヴァはパルヴァティに罪を償うように命じたのだそうです。 パルバティはカンチープラムのマンゴウの木の下で償いをして大地から「シヴァリンガム」を作ったのでした。シヴァ神が妻の罪を許した場所がこの寺院の建っている場所なのです。 ここの「シバリンガム」は大地を象徴するものだそうです。
シヴァ寺院の中でインド南部の5つの自然を表す「シバリンガム」があり、エーカンバレシュワレ寺院はその中の「大地のシバリンガム」と数えられています。他の4つは、「ティルバーナマライ寺院の火のシバリンガム」、「ジャンブケシュワラ寺院の水のシバリンガム」、「カラハスティ寺院の風のシバリンガム」、「チダンバラン寺院の空のシバリンガム」です。
 



エーカンパラシュワラ寺院の南の立派なゴープラム
高さが52mあります。


本殿。右側の沐浴用の池があります

シヴァ神殿内の本堂を取り囲む形で回廊があります。その回廊には彫刻を施した無数の石柱があります。神殿の本堂内には残念ながら入れませんでした。そこはヒンズー教徒しか入れないのだそうです。本堂を取り囲む回廊は非常に暗く、所々にシヴァ神等を祀った小さな神殿があります。そこの一つ「ダンシングシヴァ」(ナートラジャ)を祀った神殿に入ってみようか思いましたが、そこにいた僧が少し怪しいので止めました。案の定追いかけてきて案内料を要求してきました。当然無視しました。周りの石柱だけでもものすごい存在感です。この石柱の回廊はこれを彫り上げた人たちの真摯な宗教観が伝わってくるようなすばらしさでです。



シヴァ神殿内の神聖な場所を囲む回廊
正式に参拝するときにこの回廊を何回も祈りながら回ることになります。



北側のゴープラム

シヴァ神殿の裏には樹齢2000年といわれる「マンゴー」の木があります。いまでも立派に実を付けるのだそうです。 パルバティがマンゴウの木の下でシバリンガムを作ったとの言われによるものです。このマンゴウの木に小さな「揺りかご」を結びつけると子供が授かるという言い伝えがあるそうです。何人かの女性がこのマンゴーの木の周りを回っていま した。シヴァ神殿の横には大きな沐浴用の池が作られています。



本殿裏のマンゴーの木
女性が木の周りを回っていました。


本殿横のの池
裸になって沐浴している人が何人か居ました。

       
カイラーサナータ寺院(KAILASANATHAR TEMPLE)

カンチープラムでの二番目に訪問した寺院はカイラーサナータ寺院です。カンチープラムで最も古い寺院で8世紀パーラヴァ王朝時代につくられました。ここもシヴァ神を祀っています。この寺は小さいですが観光名所として非常に綺麗に整備されています。この寺院には大きなゴープラム(塔門)はなく、中心のシヴァ神殿の屋根が高く作られています。これがヒンズー寺院の古い形式なのです。この一見「塔」を思わせる高い建築物は、シヴァ神の故郷の「ヒマラヤ」の山々をイメージしているの です。ヒマラヤの高い山々と豊かなガンガの流れがヒンズー教の原点であるのですが、ヒマラヤから遠く離れた南インドでは特に 「ヒマラヤ」を形にする事が重要であったのではないかと思われます。 「カイラーサ」とは「ヒマラヤ」の意味です。

この神殿の屋根は「賑々しく神々を祀っている」のではなく簡素な装飾を施した程度の質素なつくりです。こうした単純な高い塔が次第に権威の象徴となっていって、入り口の目立つところに作られるようになり 「高さと豪華さ」を競うようになっていったようです。それが
ゴープラム (日本語では塔門)なのです。 南インドのヒンズー寺院を訪問するときにはこの「ゴープラム」がひとつのポイントになります。日本の寺院でも「門」の役割は重要です。法隆寺でも東大寺でも先ず目に入ってくる門が人々を敬虔なムードに変えてくれます。

カイラーサナータ寺院 の彫刻は後世の彫刻のように技巧が素晴らしかったり、造型が見事といったものではありません。しかし非常に素朴で力強く純粋な信仰心を表していると思います。日本で言うと「飛鳥時代の彫刻」に似ています。法隆寺の釈迦三尊像とか飛鳥大仏とかバランスが悪かったり表情が硬かったりしますが不思議と人を引き込む魅力をもっているのです。カイラーサナータ寺院全体がそうした雰囲気を持っているのです。



シヴァ神殿



カイラーサナータ寺院の遠景です。
ゴープラムより神殿の屋根の方が背が高い。



神殿北側の見事な彫刻
 


神殿に向かって顔を向けて休む「ナンディ」


ヴァラダラージュ寺院(VARADARAJA TEMPLE

カンチープラム見学の最後は少し郊外にある「ヴァラダラージュ寺院」です。ここはヴィシヌ神を祭る寺院です。 インド南部のヴィシュヌ寺院としては、「ティルパッチ」「スリランガム」と並んで有名な寺院だそうです。この寺はチョーラ王朝のヴィジャヤラージャ王によって建てられました。この寺院で特に有名なのがすばらしい彫刻が施された100本石柱の広間です。カメラ使用料「5ルピー」を払って入るのですが、この石柱に刻まれた彫刻は一見の価値があります。これだけでも国宝級といった感じでした。木の柱なら分かりますが硬い石に見事な彫刻が施されているのです。インドの寺院のひとつの見所としてて 「石柱彫刻」があるのだとということを知りました。ここにも立派なゴープラムがあります。



入り口のゴープラムです。この外に車を駐車して靴を脱いで「はだし」になって寺院に入るのです。
インドの寺院見学は「暑さ対策」が重要です。


長大な寺院の壁です。
これだけ高いと外敵は入れません。

 



石柱の間です。見事な彫刻です。



観光に訪れていた可愛らしい子供達がポーズを取ってくれました。
寺院の参拝のために「おめかし」してきたようです。少女達のパンジャビ姿が決まっています。

このあと「カンチ−プラム」特産の絹織物工場を少し見学させてもらいました。 カンチープラムは宗教都市なので多くの巡礼者が集まります。その巡礼者のために様々なマーケットが発達するのですが、ここでは絹織物が発達しました。インド のファッションといえばサリーにパンジャビ。女性にとっては安くて 、しかも手の込んだ見栄えのする生地があればそれに越した事がありません。外国人を乗せた観光バスが止まっていたりします。私は目の保養をしただけでした。スリランカルピーとインドルピーの違いを考えるとそれほど安いとは思えませんでした。 観光客に織物工場を見せるのは暗黙の約束になっているようです。
 



のどかな風景です。子供が水牛を洗っています
 


絹織物工場の実演です。

   

 


チェンナイ市内散策
 


当初の予定ではこの日「カンチープラム」から「マーマラプラム」に行き2日目は「ティルパッチ」に行く予定だったのですが、翌日の「ティルパッチ」 を取り止めることにしました。「ティルパッチ」が大変な場所であるのです。インドで最も多くの参拝客を集める寺院で、とにかく参拝客が多くて参拝するには何Kmも並ばなければならないという寺院 なのでだそうです。時間のない外国人は「金」か「コネ」で裏から入ることが必要になるようなのです。スリランカの知人が私に上手な方法を教えてくれることになっていたのでした。しかし カンチープラムの公衆電話から何回かスリランカに国際電話をかけたのですが彼とは連絡が取れなかったので した。従ってガイドのアドヴァイスもあってこの危険な「賭け」は中止にしました。 後に知ることになったのですが「ティルパッチ」はインドで最も有名な巡礼地なのでした。日帰りで行くようなところではないのです。翌日の予定を急遽変更し2日目に「ママーラプラム」に行くことにして 、一日目午後はチェンナイに戻って国立博物館見学と携帯電話登録と買物をする事にしました。 「ティパッチ」をあっさり諦めた分時間があいたのでゆっくりテェンナイ市内観光をすることができました。

チェンナイ国立博物館」はすばらしかったです。それというのもヒンズー文化(タミール文化)の絶頂期のブロンズ象が沢山展示されているのです。材質のすばらしさ(金属の調合の妙だそうです)と、造形のすばらしさが相俟って凄いレベルに達しているのです。日本の仏像だと木造であったり乾漆像であったり材質のやわらかさが造形とマッチしていますが、シヴァ神の逞しさ、 あるいはタミール人の肌の色にマッチする人物像を作るには「ブロンズ」と言う材質が適していたのかもしれません。ここだけでも価値があったと思いました。

チェンナイ国立博物館のホームページ

博物館見学の後にチェンナイ市内の大きなショッピングセンタの「スペンサープラザコンプレックス」に買物に行きました。日曜日は閉まっているのではないかと心配していたのですが、クリスマスを控えて 買い物客がごった返していました。とにかくスケールの大きいコンプレックスです。ここで何を買ったというとデジカメ接続用のUSBケーブル。旅の準備を急いでしたものですから「デジカメ 接続ケーブル」を忘れてきてしまったのです。コンピュータのことばかり考えていたのかもしれません。インドでも使えるコンピュータ用の電源コンセントは用意したのですが肝心のケーブルを忘れてしまった。 果たしてチェンナイで入手可能かどうか不安だったのですが見事に一軒目のデジカメ店で見つける事ができました。なおその店ではピクチャーディスク(オリンパス製)も売っていました。さすがインド4大都市。コンピュータ産業が集積しているといわれる南部の都市です。

コンプレックスで次に向かったのが携帯電話屋さん。インドの「SIM」カード購入のためです。スリランカからGSM携帯電話端末を持ってきているので「SIM」カードさえ替えれば利用可能なのです。ここでは「客引き」がタイミング良く声を掛けたので時間もないので彼に任せました。行った店は「カバン屋」。でも店の主人が棚の上から「ハチソン オレンジ」の「SIM」カードを取り出して説明開始。結局Rs199のカードとRs540トークカードを買ってセットしてもらいました。 直ぐにオペレーションセンタに電話してもらって通話OKになりました。合計で「Rs600」相当の通話が可能となりました。

「SIM」カードを買った途端に便利になりました。インドは携帯電話産業の競争が激しいとは聞いていましたが凄いです。チェンナイなどの都会では多くの人が携帯を持っています。後で失敗したと気づいてのですが「ハチソン」は都会でしか電波が届かないのでしす。従って郊外・地方都市に行くとローミングになります。しかも 料金を「リフィル」しようとおもってもハチソンの店舗は郊外にはないのでした。節約するしかありません。でもこの携帯で随分助かりました。感度もいいです。日本からの通話もはっきり聞こえました。インドの携帯電話産業の凄さを実感しました。

携帯電話、デジカメケーブルを手に入れたので非常に満足して、今日最後の市内見物に向かいました。チャンナイの東側はベンガル湾なのですがそこに広大なビーチが広がっているのです。 「マリーナビーチ(Marina Beach)」と呼ばれている浜辺の幅は500mくらい長さは5Kmに達します。とにかく広い。もっともチェンナイから更に南にいくと南北に100Km続く浜辺があるそうです。 マリーナビーチを車から横目に見ながら移動したのですが、もっと驚いた事は、そこにとんでもない大勢の人が集まっている事。日曜日の夕方、家族で、また友人達といっしょに浜辺で楽しく過ごす人たち。人口600万人都市の威力です。
 



とにかく広いマリーナビーチ


カーパレシュワラ寺院(Kapaleeswarar Temple)

チェンナイの浜辺から少し内陸に入ったところにあるのが「カーパレシュワラ寺院」(Kapaleeswarar Temple)。チェンナイ市民のヒンズー寺院という感じの寺です。夕方に見学に行きました。ここのゴープラムは立派なのですが残念ながら修理中でその威容はすっぽり椰子の葉で覆われていました。この日は何か祭礼が行われてたようで、シヴァ神を祭る本殿の回 りの道は参拝客で一杯でした。身動きできない状態でした。ものすごい混雑で私の経験でいうと「金曜夕方の大阪心斎橋筋」とか、「1月8日縁日の夜の信州上田の八日堂 」のようでした。でも まさしく「現役」のヒンズー寺院の姿を見る事ができて幸運でした。



幻想的な寺院、参拝客



参拝後に靴を返してもらおうとする参拝客


この日はホテルでインド最初の夕食をたべました。ブッフェスタイルなので一人でもいろいろ食べられるところがいいです。ビールを注文すると「KingFisher」がでてきました。他に選択肢はありません。でも冷えていて大変美味しいビールでした。そして 予定とおり部屋を変えてもらったので、その夜からとても快適に過ごすことができるようになりました。

        
  



綺麗な部屋に代えてもらいました。



晩御飯はカレーとビールです。

 

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