Golden Rock Temple of Dambulla

ダンブッラの石窟寺院

 

石窟寺院で有名な「ダンブッラ」は地理的にスリランカのほぼ中心に位置しています。コロンボから日帰りで行くことができる世界遺産なので、スリランカを短期間来訪する人を案内できます。コロンボからはキャンディロード(A1国道)で「ケゴール 」の手前の「アンベプッサ交差点」まで行き、ここを左折して「A6国道」に入って北上します。交通の要衝「クルネガラ」を通過しA6国道がA9国道にぶつかる交差点付近がダンブッラです。

コロンボから約130Kmの距離があり、日中なら車で約5時間かかります。朝夜明け前の道が空いている時間にコロンボを離れると2時間半で着くこと ができます。ダンブッラ寺院はダンブッラ交差点からA9ロードをキャンディ方面に約3Km南下した右側に位置しています。道を挟んで東側は観光地らしく土産物店・花・ろうそくを売る露天商が密集しています。ここで 花を買ったりして参拝の準備をすることになります。

ダンブッラ寺院への外国人の 入場料は「Rs500」。「カルチュラル・トライアングル」チケットはダンブッラを含んでいないので注意が必要です。スリランカ滞在ビザを持っていても安く はりません。



ダンブッラロック麓の金色の大きな仏陀像。
ここが岩山入り口です。


ダンブッラの岩山と石窟寺院第5窟の奥から撮影
 

世界遺産に登録されている「ダンブッラ石窟寺院」は遠くからも良く見える「ダンブッラロック」の中腹にあります。A9ロードに面するダンブッラ寺院正門を入ると、左手前方に近代的な建物とその背後の巨大な金色の仏陀坐像が目に飛び込みます 。ダンブッラ石窟寺院はその建物の一番左側の石段を登っていくことになります。約15分位岩山を登ると、石窟寺院入り口に着きますが結構きついです。そこにたどり着くまでに以下の点に注意する必要があります。

○非常に暑いです。できれば午前中に登るのがいいです。日が高くなると大変です。帽子は必需品です。
○木彫り彫刻やTシャツの土産物売りがしつこく日本語で話しかけてきます。買うかどうかは個人の判断です。
○野生のサルが沿道に座って観光客の食べ物を狙っています。毅然とした態度が必要です。

 


登山道


石窟寺院の入り口



参道の猿

このダンブッラ石窟への登山道は最近になって整備されてきました。迂回となるのですが比較的平坦な道と急な階段の近道のどちらかを選べます。登山道を登りきると石窟寺院の入り口です。ここで、靴を脱ぎ、チケットを見せることになります。正門でもらったレシートがチケットになりますので捨てずにキチンと持って来る必要があります。

ダンブッラ石窟寺院は入り口から順番に第一窟、ヒンズー窟、第二窟、第三窟、第四窟、第五窟という順番に並んでおり、第一窟から見学が始まります。日本の寺院見学でもそうですが 石窟寺院内は暗いので懐中電灯が必須アイテムです。また最初はガイドを頼んで解説してもらうのがいいでしょう。外国人とみると英語のガイドが話しかけてきます。

石窟の作られた年代は、第一窟、第二窟、第四窟は紀元前一世紀からアヌラダプラ王朝時代、第三窟は18世紀キャンディ王朝時代第五窟は1915年です。しかし、第一窟・第二窟・第四窟の仏像の様式からすると、それほど古いとは考えられません。ユネスコの解説書の中でもその年代には疑問符が付けられています。

ここの仏像はそれぞれの個体として見るのではなく、その集団として捕らえるほうがいいでしょう。なにせ100体以上の仏陀像が所狭しと並んでいるのですから。



第一窟の入り口付近


涅槃像の顔



 

第一窟

第一窟は「偉大な神の神殿」と呼ばれています。岩山の自然の岩から掘り出された「涅槃象」(長さ14m)が置かれていますが、この涅槃象でほぼ満杯のような狭い石窟です。 石窟内の仏陀像ではダンブッラ最大の像です。

横たわっている仏陀には「リクライニングブッダ」と「涅槃」を表した仏陀像があるのですが 、この第一窟の横たわる仏陀は「涅槃象」です。涅槃象は「つま先」が少しずれているのです。顔も心なしか苦しそうな表情なのです。

仏陀は胃腸が弱くて胃腸をこわしたことが原因で亡くなりました。仏陀の足の方の隅に置かれている像は仏陀の最愛の弟子「アーナンダ」です。 悲しそうなアーナンダが仏陀の最期を看取ったのでした。

仏陀の頭の方の隅にヒンズー教の神「ビシュヌ」が置かれています。 仏陀はビシュヌ神の生まれ変わりの一人でもあるのです。


本尊仏陀立像


正面に並ぶ仏陀坐像


ニッサンカマラ王像


バラバンガフ王

本尊周囲


見事な天井画

第ニ窟

第二窟は「偉大な王の神殿」と呼ばれています。この名前は石窟寺院の創建者「ヴィタガミニ・アブハヤ王(バラガンバフ王)」に因んだものです。歴史上バラガンバフ王は先代の王が側近に暗殺されたため紀元前104年に即位したとされています。しかし即位5ヵ月後タミール人の侵攻に遭い「王妃のソマデビ」とともにアヌラダプーラを脱出しました。逃走の途中に敵に追いつかれた時、妃の「ソマデビ」は王を救うため王から王冠とマントを奪いジャングルに逃げ込んだのでした。敵が「ソマデビ」を追っている間に王は逃げ延びることができました。この時 に王はしばらくダンブッラの石窟に身を隠したのです。

その後バラガンバフ王は勢力を盛り返して紀元前88年に再びアヌラダプーラに北上しタミール人から政権を奪取したのです。バラガンバフ王朝はその後大変栄えたので王は 一時身を寄せたダンブッラの石窟に寺院を建立したのでした。(という話です)

この第二石窟は長さ52m、奥行き23m、高さ7mのダンブッラ最大の石窟です。中に入ると整然と並んだ仏陀像に圧倒されます。第二窟には二人の王の像があります。入り口の直ぐ左側に聳えているのが前期の「バラガンバフ王」。入り口左手奥にひっそり置かれているのが「ニッサンカマラ 王(在位1174−1183)」です。ニッサンカマラ王は非常に優れた人物であったようで多くの国内改革を行ったそうです。このダンブッラ寺院も多分ニッサンカマラ王がつくったのではないかと思 われます。この洞窟には60体あまりの彫刻がありますが、本尊とされているのは入り口正面に立つ「仏陀立像」です。この像の右手は「施無畏印(AbhayaMudra )」を結んでいます。掌は左側を向いていて、日本で多く見られる正面を向いている形とは違います。左手は衣装を纏う形で方に置かれています。この姿勢の仏陀はスリランカで多く見かける形です。

バランスが取れていることで有名な「アウカナ仏陀」もこの形です。仏陀立像の左右には二体の菩薩が立っています。左が「マイトレーヤ」右が「ナータ」だそうです。 この仏陀立像・菩薩二体の後ろにやはり二体の菩薩像が置かれています。青く塗られた像は「ウパルバン」、金色(黄色に近い)に塗られた像が「サマン」です。二人の王の像と四対の菩薩の像の他はすべて仏陀像です。石窟の背面、左右の側面、正面に50体以上の仏陀像が置かれています。壮観です。

詳しくは判りませんが、キャンディ様式に近い感じがします。これらの彫刻に加えて天井の壁画も有名です。 「仏陀」にまつわる色々な場面が描かれているのだそうです。残念ながら、これをいちいち確認している時間はほとんどありません。また石窟右奥に天井から湧き水が落ちてきている場所があります。水が高いところに登ってから落ちてくるというので「奇跡の水」などと解説されています。しかし実は、ダンブッラ岩山の頂上には水溜りがあるのです。私は2002年1月初めてダンブッラに行ったときにダンブッラ岩山の頂上まで登ってみました。そこはすばらしい眺めでした。頂上は比較的平らで多くの水を貯めるのちょうどいい穴がいくつもありました。そうした水が岩の割れ目を伝って滲みだしているのでしょう。



中央の本尊

側面の立像
 

第三窟

第三窟は「新しい偉大な神殿」です。キャンディ王朝の最後の頃の王「キルテ・スリ・ラジャシンゲ王(在位1747−1782 )」が作ったものです。彼は進出してきたオランダ人と共存してスリランカの仏教振興に力を尽くしたのだそうです。このラジャシンゲ王の像が入り口近くに立っています。

この王の像の 他に57体の仏陀像があります。15体は立像、42体が坐像です。この第三窟の天井にも無数の仏画が描かれています。
この仏像群は「キャンディ様式」の仏像ということができます。



第4窟の不幸な(?)仏陀像


四窟内部


盗掘に遭ったダーガバ
 

第四窟

第四窟は「西の神殿」です。 西の神殿と呼ばれていますが、新しく第五窟がその奥に築かれたので第五窟が一番西に当たります。現地のガイドの話では、この第四窟は第一窟・第二窟と並んで古く第三窟が後に作られたのだと解説してくれました。しかし収められている仏像はキャンディ様式のものでとても第三窟より古いとは思えません。

この第四窟の一番奥に不幸(?)な仏陀坐像があります。その仏陀坐像だけが黄色の塗りが新しいのです。実は嘗てドイツ人女性が天井画を撮影するためにこの仏像に腰掛けてしまったの だそうです。その「事故」を清めるために新しく塗り直されたのです。ドイツ人女性を下から支えた仏像は複雑な心境だったのではないかと思われます。

また窟中央には小さなダガバがありますが、このダガバには盗掘された跡があります。言い伝えではバラガンバフ王の「妃ソマデビ 」の宝石が治められていたのだそうです。そうした話があるので「この石窟は古いのだ」と云わないと辻褄があわなくなってしまいます。



五窟の仏像



第五窟

第五窟は非常に新しいものです。昔倉庫に使われていたところを神殿に変えた ということです。1915年に最終の補修が行われました。キャンディ様式の仏像11体が納められています。第一窟から第五窟まで合計すると100体以上の仏陀像が収められていることになります。日本の仏教信仰を考えると、仏陀崇拝、阿弥陀崇拝、薬師崇拝、観音崇拝、地蔵崇拝などのように信仰の形が少しずつ変わってきます。厄除けだとか学力向上だとか現世利益の方向もそのひとつです。

しかしスリランカ仏教は非常に純粋で 「仏陀」信仰以外ありえません。それはひたすら仏陀に感謝するものです。満月の日(ポヤ)には仕事を休んで仏陀の教えを勉強するとともに深く感謝するのです。

ダンブッラには仏像の様式だの、新しい・古いといった考え方を持ち込むことは必要ないのかもしれません。ひたすら仏陀に囲まれていることで、仏陀に育まれている幸せを感ずるところなのでしょう。大きな曼荼羅の中に身を置いているような錯覚を感じます。
 

 

ダンブッラ石窟寺院に関する文献です。

左はダンブッラ寺院編纂の綺麗な解説書。

右はユネスコ協賛の世界遺産解説書です 。

 


 
 

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